山形 芙美さん 32歳
Profile
北茨城市出身。 茨城県立日立第一高等学校卒業、白百合女子大学中退。2014年に日立市で小学生対象の学習・習い事が出来る放課後児童クラブKusuKusuを開設。他に、特定非営利活動法人子ども大学常陸理事長、日立商工会議所女性起業家交流グループみゅーずnet会長を務める。2019年4月より株式会社共進舎代表取締役。
自身の経験から、母親支援を決意
日立市で、放課後児童クラブKusuKusuを運営している山形さん。小学校へのお迎え、習い事への送迎、学習指導、英語・そろばん・プログラミングなどの指導、食育・金融教育など生きる力をつけるイベントの開催、夕食サポートなど、働くお母さんのニーズを満たす充実したサービスを展開しています。なぜ、こうした場を作ったのでしょうか?
「大学進学で東京に出た後、地元に戻り、実家の学習塾の手伝いをしていました。学生の頃から漠然と、将来は顔の見える関係の中でやったことが全て自分の実績になる地元で起業したいと考えていましたね。26歳の時に出産し、ママになって初めて子育ての大変さを知りました。産後ほどなくして仕事に復帰したのですが、夕方教室のトイレでバスタオルをかけて搾乳していると、勝手に涙が出てきて。その時に『私は母親支援をしよう。』と強く思いました。」
塾と並行して、児童クラブの立ち上げ準備を進めましたが、子育て期と重なっていたため、周囲の理解を得ることに苦労したそうです。「でも、事業には今やらないといけない、という機があるんです。」開設当初は、保護者が学童保育を探す時期の予測を誤って苦戦したものの、その後は、サービスの周知や口コミによって利用が増えていきました。
続けていく中で広がる世界
開設から5年。山形さんの仕事内容も、現場中心から企画・会社のブランディングにシフトしていきました。事業の段階が変化するにつれて、やりがいも変わっていったそうです。「スタート時は、自分が思っていたことを外に伝えて、形になるところに喜びがありました。次の段階では、現場で人と触れ合う時や、日常の小さなところで子ども達の大きな成長を感じる時にやりがいを感じました。今は皆と一緒にやってきた実績が数字に表れることが嬉しいです。」
会社のいいところについて伺うと、「すごいスタッフが沢山いますが、皆得意不得意がハッキリしているので、補完しあって働いています。スタッフ自身も子育て中のため、保護者の立場で考えられることが強みです。」
ご自身の事業に加え、小学生を対象に各分野の専門家が講義を行い、真理探究の機会を提供するNPO子ども大学常陸の理事長や、日立商工会議所女性起業家交流グループみゅーずnetの会長も務めています。「色々やっているように見えますが、原点は1つで母親支援をすること。これを多くの方に届けるために事業にして、続けていくためには経営が出来ないといけないので、起業や経営にも力を入れています。」
ワークライフバランスの 逆を行く
仕事とプライベートの両立についてもお聞きしました。「ワークライフバランスの逆を行くって思っていて。仕事自体が生活だし、生活自体が仕事、という意識があります。しかも、事業はお客様のためにも継続していく必要があり、そのためには成功し続けないといけません。成功するということは、バランスを崩すということなので、割り切ってやっています。ただ、最近は、家族に納得してもらうために意識して仕事量を減らしています。
また、以前は、仕事について家族に話していませんでしたが、『どんなことをやっているのか分からない。』と言われてしまったので、今はなるべく細かく話すことを心がけています。」
私から私達、 そして皆の事業へ
今後の展望については、「あえてノープランで、その代わり、周りの価値判断に流されずにどっしりしていたい。」と話す山形さん。「学生の頃の自分に伝えたいのは、将来を決めすぎなくていいということ。いつまでに~しなければ、という固定観念に囚われる方がまずいです。」
「Kusukusu は、10年後も続けていますが、もっと変わっていくと思います。最初は私の事業だったものが、スタッフが増えていって私達の事業になり、教室が大きくなっていけば社会的な責任や関わる方が増えて皆の事業になっていきます。人口が減っている北茨城市にずっと危機感を持っているので、地域の活性化にも貢献していきたいですね。」
柔らかい雰囲気の山形さんですが、お話から、「母親支援」を軸に活動の幅を広げる、芯が通った強さがうかがえました。
(茨女レポーター:柴田 志帆)