小林 美幸さん 32歳
Profile
水戸市出身。茨城県立水戸農業高等学校卒業後、地元を離れ都内の学校法人中央工学校中央動物専門学校に進学。東京で2年間学んだ後、茨城県内の動物病院に10年以上勤務。現在1児の母。
動物が大好きで、人にも動物にも優しい小林さん。愛犬家や愛猫家が増え、家族同様に動物たちと暮らす人にとって、動物病院は欠かせない場所。そこには獣医師だけでなく動物看護師の働きが土台にあります。動物看護師として、また母として生きる小林さんに仕事・プライベートについて聞いてみました。
命と向き合い命の大切さを考えた学生時代
元々、動物は好きでした。中学生の時、隣の家の人が飼っていた猫ちゃんが、体調を崩して動物病院に入院したんです。その猫ちゃんのお見舞いに行くことで、動物病院で働く人の仕事を知って、興味を持ち始めました。そして「将来は動物に関わる仕事をしたい。」と考え、畜産科のある茨城県立水戸農業高等学校への進学を決めました。
高校生活一年目に、一人一羽ずつヒヨコさんの面倒を見る授業があり、動物に対する責任感を学びました。三年生では、鳥・牛・豚の中から自分で選ぶ授業もありました。私は豚さんを選び、人口受精や出産、去勢手術をするなど、より多くの時間を過ごす中で、愛着がわいてきました。名前を呼ぶと、私の方へ走って来てくれたり、目の前でゴロンと横になってくれたりと本当に可愛かったです。最後には、収穫祭の豚汁になることが決まり、とてもとてもショックでした。でも命ってこういうものなんだな…と体験したことで、「私は食べ物を残さない、命を削ってくれているのだから。」と、思うようになりました。
同時に、動物看護師になるという夢も明確になりました。しかし、県内には学校法人という奨学金が下りる専門学校がないため迷っていると、当時の進路指導の先生が、寮のある東京の学校を調べてくれました。「金銭的にも距離的にも心配している親御さんを、ここなら安心させて進学できるんじゃないか?」と、後押ししてくれたおかげで、東京への進学を決めることができました。先生には心から感謝しています。
やっぱり私には茨城の雰囲気が肌に合う!
都内での就職も始めは視野に入れていたんです。でも、道ですれ違った人に「こんにちは」と気持ちよく挨拶できる茨城の方が私には合っていると思い、最終的には茨城で就職先を探しました。
就職を前提に実習をさせてくれる動物病院が多い中、地元の水戸市には、実習はさせてもらえるけれど、その年の求人募集をしているところがなかったんです。そのため、水戸市以外に視野を広げて、就職活動をかねた実習をさせてもらい、そこへ就職しました。
今勤めている動物病院も、実習先の先生から声をかけてもらったことがご縁です。実習の時にその病院が、自分に合う合わないなどの相性を体感できるので、いくつか実習先を選んでおくと就職の時に良いと思います。もちろん同級生の中には、やっぱり自分には合わないと言って進路を変えた人もいますからね。実習先を考えるときから、働きたい地域や病院を長い目で見て選ぶことをお勧めします。
もどかしさや挫折と葛藤の日々
「もっと、何かしてあげられることがあったかもしれない…」補助的なサポートしかできないもどかしさ、そんな挫折はしょっちゅうです。
獣医師は怪我や病気を治すことがメインで、看護師はその中間の立ち位置。飼い主さんにとって何が一番困るかなぁと考えた時に、病院は先生がいるから安心できるけど、ペットを家に連れて帰った時にとても不安になるのかなぁって思うんです。そんな時に、「私ができることって何だろう?」といつも考えています。その子の症状によって、病院で薬を飲ませたり、食欲がなければ、「どのような食事なら食べることができるのか?食事を食べてくれない子の時は、どんな風にしたらこの子は食べてくれるのか?」と、飼い主さんと一緒に考えたり、実践したり、自宅でも飼い主さんの負担を少しでも軽減できるアドバイスをします。
印象に残っている出来事は、数年前にわんちゃんを連れてきたある娘さんから「私も小林さんのような動物看護師になりたいです。」と手紙をいただいたことです。丁度仕事で思い悩んでいる時だったので、本当に励まされました。
動物看護師に憧れている学生さんは、まずは、やりたいと思ったことを実際にやってみてほしいです。人生何回もやり直しはきくから、迷ったらまずはやってみることをお勧めします。飼っている動物がいれば、一緒に動物病院に行って、「どんなところなのか?どんなことをするのか?」などを見ることもできますね。興味を持ってくれた人にこそぜひ、このやりがいのある仕事を頑張ってほしいです。
人間と違って言葉の通じない動物たちの困り感や想いを察して、時に動物たちに寄り添い、時に飼い主さんに寄り添うことは、動物看護師にしかできない大切な役割。そこに熱意を持って、取り組む小林さんはまさに動物界の白衣の天使だと感じました。
(茨女レポーター:柴沼 あずみ)