伊藤 麻利奈さん 28歳
Profile
ひたちなか市出身。茨城県立水戸第一高等学校、東邦大学薬学部卒業後、調剤併設ドラッグストアで4年間薬剤師として店舗での勤務、マスメディア対応、学生の就職活動の支援を行う。自身で、不動産事業や医療記事の監修・ライティングも手がける。2019年よりイギリス在住。
ドラッグストアで薬剤師として勤務した後、現在はイギリスで語学の勉強やご自身の事業を行っている伊藤さんに、薬剤師のお仕事や今後の目標について伺いました。
自分の力で生きていくために薬剤師の道へ
「薬剤師を目指したきっかけは、幼い頃からの母の勧めです。母は、薬剤師は自立できて、色々な人生の選択肢にも柔軟に対応できる職業なので良いと考えていたようですね。実際に職業体験などにも参加して、社会や人の役に立つ良い仕事だと感じました。デザインや絵画にも興味があったので、芸術関係の学部に進むことも考えましたが、『自分の力で生きていく能力』を身につけたいと思っていたので、薬学部に進みました。」
大学卒業後、調剤併設ドラッグストアに入社した伊藤さんは、ひたちなか市や都内の日本橋・麻布十番・足立区の店舗で勤務しました。
「お店での基本的な仕事は、調剤と接客です。調剤は、患者さんが持ってくる処方箋を見て、薬を用意し、店舗になければ取り寄せます。この病気を持っている方にはこの薬を使っては駄目ということがあるので、本当に薬が患者さんに合っているのかということを慎重に判断します。粉薬の調剤では、体重に合わせて量を計算したり、複数の薬を混ぜたり、一包ずつ袋に詰めたりします。お子さんの場合は、薬を飲ませるのに苦労していると聞いているので、味を工夫するなどしてどうにかして飲めるように提案しました。接客では、売り場に出て、お客様の話や生活習慣を深く掘って聞いていき、自分で治療できる市販薬を勧めていました。」
学生時代に水戸の梅大使を経験していた伊藤さんは、広報の仕事を担当することもあったそうです。「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)についてお話したり、TV番組のクイズコーナーに出演したり、薬剤師のホスピタリティについて新聞で話したり。PRや情報発信に興味があったので、楽しかったです。」
やりがいは関わる人の助けになること
お仕事では、患者さんの話を絶対に否定しないことを意識してきたという伊藤さん。
「患者さんの中には、治したいという気持ちと焦りで攻撃的な方もいらっしゃいます。でも、そういう方にしっかり対応していくと信頼を得られて、最終的にはファンみたいな形になったときには、嬉しかったです。有益な情報発信ができたとき、患者さんや身近な人の助けになったときにやりがいを感じます。」
伊藤さんは、ご自身で事業もされています。
「仕事にのめり込みすぎて、ストレスを感じていた時期がありました。薬剤師で食べていく道ともう一つ副業という形でやっていくということを考えて、起業しました。不動産投資と、医療記事を書いたり、記事の内容をチェックしたりする仕事をしています。薬剤師の経験があるから、この仕事もあるので、何事も経験は無駄にならないと思いました。自分の事業を立ち上げるとか、お金を稼ぐ方法について勉強するのは楽しかったです。事業は、一つずつクリアしていくのが数字で明確に見えるので、そこが面白いですね。事業をやっている人とも仲間になり、勉強になりました。」
イギリスに来てからの変化
伊藤さんのターニングポイントは、渡英。
「ずっと海外に住んでみたいと思っていて。取得が難しいイギリスのワーキングホリデーのビザが当たり、結婚の予定もない、4年間仕事もした、ということで会社を辞めることを決意しました。
日本にいた時と現在とでは、暮らし方や人との関わり方が変わりました。前職では、週5で長時間仕事をしていて、連休や友達に会う時間もなかなか取れなかった。今は、自分のやりたいことに注力していますし、ゆっくり生きるように意識しています。」
以前は、茨城県から出たいと考えていた伊藤さんですが、最近は考えが変わってきたそうです。
「人間は動物だから自然に触れていないと駄目だなと、イギリスに来てから実感して、自然が多い茨城県がいいところだと思うようになりました。地元で子育てしている子も多いし、勉強や趣味に没頭するのにもいい環境なのかな。」
今後の展望をお聞きすると、「英語をしっかり習得して帰りたいというのと、薬剤師の仕事に戻り、更に活躍の幅を広げたいという気持ちが強いです。今、勉強したいことは心理学とジェンダー。性の話って大事なんですけれど、日本が遅れているのを実感していて、そこを変えていきたいです。いつかは、TEDトークに出られるくらい知識を持って情報発信できたらいいなと思います。」
幅広い薬剤師の仕事 進路に悩む人も目指してほしい
最後に、薬剤師に興味のある方へメッセージをお願いしました。
「薬剤師は、目指すのにはとてもいい仕事だと思います。今後、AIの活用や、医療制度が変わる可能性もあるので変革の時を迎えていると思いますが、すごく楽しい仕事になると私は信じています。
病院や薬局だけでなく、医薬品メーカーの営業部門・工場とか、保健所、麻薬取締官など幅広い職種があって、医療記事や治験の書類を書くことは在宅ワークでもできます。多様性があるので、進路に悩んでいる人にもぜひ選んでほしいですね。」
薬剤師、そしてご自身の将来像について明るく熱心に語る姿にわくわくしました。
(茨女レポーター:柴田 志帆)