室 智美さん 29歳
Profile
鉾田市出身。 私立大成女子高等学校、創造学園大学創造芸術学部音楽学科音楽療法コース卒業。障害者支援施設の生活支援員、サービス付き高齢者向け住宅の介護職員、障害児者向け専門病院の生活支援員を経て、フリーの音楽療法士「音楽療法ぱれっと」として活動中。主に、ひたちなか子育て広場コパン、石岡デイサービスようよう、イオンモールつくば内カルチャーセンター、その他小美玉市より依頼を受けて実施、鉾田市にて自主開催。
音楽療法という言葉、耳にしたことはあっても、どんなことをするのか知らない人も少なくないはず。音楽療法を知ってもらうことから始まる仕事を選び、なぜそこまで生き生きと活動できるのか。実際に音楽療法のセッションを受け、インタビューしてきました。
父の死をきっかけに出会った 音楽療法
「中学生までは、将来ピアノの先生になりたいと思っていました。その当時、父をがんで亡くし『自分に何かできなかったのか?』と後悔だけが残りました。そんな時、たまたま買った音楽雑誌で、音楽療法士の仕事を見つけ、『これだ!』と感じました。
さらに、高校2年生の時に母が統合失調症になり、精神科へ入院。『病気がひどくなる前にできたことがあったのでは?』と、自分が続けてきた音楽の力で、たくさんの人の支えになりたいと、改めて強く思いました。」
「絶対に音楽療法士になる!」そう決めて音楽療法コースのある大学へ進学した智美さん。施設での実務経験を経て、社会人2年目に入るときに、「日本音楽療法学会認定音楽療法士」の資格を取得。
「資格は修得したものの、音楽療法士の仕事はほとんどないのが現状。『まずは現場を知ろう。』と、ヘルパー2級と介護福祉士の資格を活かし、障害者支援施設や高齢者向け住宅、障害児者向け専門病院で6年間働きました。その間も『30歳までに、フリーの音楽療法士になる!』と思い続け、休日を利用し、ボランティアという形で音楽療法の活動をしていました。」
2018年3月に、勤めていた会社を退職。29歳になる同年4月に「音楽療法ぱれっと」を立ち上げ、フリーで活動をスタート。長年の夢を叶えた智美さん、音楽療法士として独立することはゴールではなく、新たなスタートの日々でした。
何気ない参加者の一言が、 私にとってのやりがいです
「『今日も楽しみにしています。』『音楽にふれている時間はあっという間です。』何気ないこの一言が、私にとってのやりがいです。」現在は、ひたちなか・小美玉・鉾田・石岡・つくばで音楽療法士として活動中の智美さん。ほとんど募集のない仕事のため、施設などへ直接足を運び、音楽療法について説明し活動を広めています。
「現在の受講者は主に、未就学児や高齢者。高齢者の中には、認知症などの病気のため、人との関わりが難しい方もいます。音楽療法では、歌謡曲を用いて、昔の記憶を引き出したり、馴染みの曲を聴きながら歌ったり、身体を動かしたりしています。そうすることで、脳の活性化や周りの人とのコミュニケーションに繋がっていきます。
あるお母さんから、『保育園で自信をもてない子どもが、音楽療法を受けてから、自信をもてるようになりました。』と声をかけてもらったことがあります。そういった言葉が活動の励みです。」
参加者の方からそのような声が上がる理由が分かります。智美さんが作り出す心温まる空間は、歌ったり、楽器を演奏したり、音楽に合わせて身体を動かす中で、言葉がなくても人と繋がることができるから。
障害のあるなしや年齢に 関係なく、みんなで音楽の 空間を作りたい
今後の目標を聞くと「地元鉾田で音楽療法の活動をもっと広めたいですね。また理学療法士や作業療法士の方と協力して、精神病棟を含む、様々な病院の中に、音楽療法を広めていきたいです。また、大学生の時から決めていた緩和ケアにも音楽療法を通して携わっていきたいです。」と、目を輝かせて答えてくれました。
今後の課題は、SNSでは情報が届きづらい高齢者の方たちへ、どのように音楽療法を発信していくか?のようです。
『自分がやりたいと思ったときに踏み出してほしい。もやもや、葛藤があっても好きなことなら続けられる!』中学生の時から思い続けてきた長年の夢、音楽療法士。自分で仕事を創り出す道は、決して簡単ではないはず。不安や葛藤を抱えながらも、日々前進する智美さんからは、目には見えないパワーを感じました。できない理由を考えるよりも、どうしたらできるだろう?と可能性に意識を向ける大切さを、智美さんから学びました。
(茨女レポーター:柴沼 あずみ)