藤井 瑛子さん 33歳
Profile
つくば市出身。 茨城県立土浦第一高等学校、東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、セイワ楽器(株)ヤマハ音楽教室にてピアノ個人講師として勤務。2017年よりTONICA音楽院でもピアノ講師を務める。他、ピアノソロ、アンサンブル等の演奏活動を行う。
直感で決めた音大受験 卒業後も音楽の勉強を 続けられる仕事に
守谷市で2歳の娘さんを育てながら、週に1度2つの音楽教室でピアノの個人レッスンを行っている藤井さん。音楽好きのご両親のもと、3歳からリトミック(リズムや歌に合わせて身体を動かす音楽教育)、7歳からピアノを習っていましたが、当初は音楽の道に進もうとは考えていなかったそうです。
「志望校を決めたのは高校2年のとき、直感で。自分がこの先何を勉強していこうかと考えたとき、何かが弾けたように『音楽をやろう!』って。そこからが本当に大変で、普通、音大に進もうという方は、6~7歳の頃から勉強しているので、私は始めるのがすごく遅かったんです。毎日睡眠時間を削って勉強したり、毎週鎌倉まで往復6時間かけてレッスンに通ったり…。」
大学進学後、卒業を控えた時期になると、「大学4年間では技術も知識も全然勉強しきれなくて。地元の音楽教室に入社後、『自分でも勉強を続けながら出来る仕事をください』と会社に伝えたところ応援していただき、1年目は事務や企画・運営の仕事をしながら講師向けの講座に参加したり、音楽の現場での仕事もさせてもらったりしました。現場を見ていて自分も教えたくなり、2年目からは講師の仕事に変えていただきました。」
生徒さんが続ける姿を 見ていられるのが幸せ
ピアノ講師として、週5日、曜日ごとに異なる教室でお子さんから年配の方まで指導にあたってきた藤井さん。「丸々10年見ている方もいます。 この仕事は、場所に定着して、生徒さんが小さな頃から大人になるまで続ける姿を見ていられるのが幸せ。上達していく様子に日々やりがいを感じます。家を探すとき、もっと東京に近いところも話に上がったけれど、教えてきた生徒さんと離れがたく、職場を変えたくなかった。主人が都内に通勤しているため、始発がある守谷を選びました。」
仕事の傍ら、趣味でミュージカルも続けてきました。小さい頃から家族でミュージカルを観に行っており、高校に入ったきっかけも、文化祭で合唱部のミュージカルを見て「これやりたい!」と思ったからだそう。
大学では、合唱部時代の仲間達とサークルを結成。社会人になってからは、単発で企画を立てて参加できる人が集まり、公演を行うスタイルに。藤井さんは演じ手・団体の代表・音楽監督としてずっと関わってきました。
「私は、ミュージカルの中でも音楽的な要素に目が行って。こういう旋律だからこういう感情が歌える、とかを分析して実演するのが好きですね。公演で学んだことが自分の専門や仕事にも生かされています。ピアノは個人的な作業になりやすいけれど、ミュージカルはみんなでアイデアを出し合ったり、議論するときに自分の考えを再確認したりします。ピアノだけをやっていると得られなかった経験ができました。」
みんなに自分の仕事を 応援してもらってきた
出産後3ヶ月で仕事に復帰。「出産前から教えていた生徒さんのためにもなるべく早く戻らないと、と思って。普段は家事・育児脳で、週1日だけ仕事脳に切り替えることがうまく行かないこともありました。以前は自宅に防音室がなく、日中の子育ての合間を縫って1日20分は練習しよう、と頑張っていたんですが、その20分がなんと難しいことか。守谷に防音室付きの家を建てた後、子連れ仲間で久々に演奏会をやろう、という話になって。2017年10月に0歳児から入れるコンサートを行ったら、ホールが超満員。お客さんの6割くらいが子連れで、ニーズの高さにびっくりしました。」
周囲の人にも恵まれてきたと話します。「好きか嫌いか考える間もなく、音楽が普通にある環境でした。親も、お金も労力も時間もかけてお稽古をやらせてくれたけれど、誰も私が音楽の道に進むなんて思っていなくて、完全に自分の意志。主人とその家族も応援してくれていますし、恩師は今の私を受け止めた上で導いてくれます。私が音楽の仕事をするのを止める要素が何もないです。もちろん、この仕事のために自分がやらなければならないことはたくさんあって、厳しさもあるけれど、それを辛いと思わせないでいてくれる周りの暖かさを感じています。」
仕事と暮らしの ちょうどいいバランス
これまでずっと住んできた茨城を、今後も離れるつもりはないそう。「茨城の生徒さんは、みんな素直で、可愛くて、保護者さんも暖かい方が多いです。この地域の雰囲気が心地良いから、外に出ていく意欲が湧いてこなくて(笑)。」
将来の目標についても伺うと、「夕方から夜がメインになりやすい仕事なので、家庭とのバランスをどうするかという不安もありますが、できる範囲で仕事の割合を増やしていきたいです。自宅で生徒さんを教えるつもりで、リビングに接した防音室を作ったので、いずれは子どもを見ながらレッスンができるといいですね。私は仕事一本になりきれないところがあって、子どもも見ていたいし、家事も自分でやりたい。そのためには自宅で仕事をするのが一番便利。全部そこそこのバランスが自分らしいと思います。娘とも趣味で一緒にピアノが弾けていたら楽しそうです。」
「自分のルーティンを崩さないことが、心の健康のためにも大事だということが、出産してから特にわかるようになりました。今後子どもも手が離れていくし、毎年少しずつでも出来ることを増やしていけるかな。」と話す藤井さん。好きなことを軸に、自分らしいバランスで生きるヒントを教えてもらいました。
(茨女レポーター:柴田 志帆)