野原 香里さん 21歳
Profile
鹿嶋市出身。 常磐大学卒業。幼い頃から水戸のまちに憧れ、学生時代には、ゼミで水戸のお店を紹介する冊子「水戸の職人物語」を作成。2016年4月から水戸市役所税務事務所にて勤務。
憧れから悲しみまで 水戸でさまざまな気持ちを味わう
鹿嶋で生まれ、中1から水戸に引っ越してきたという野原さん。「水戸のまちなかは私が初めて見た都会だったので、憧れを持ったんです。高校時代は自転車通学で、いろんなお店を開拓しました」と水戸との出会いを語ります。そんな水戸のまちを置いて他県に行くのはなんだか寂しいと、県内の大学へ進学。
大学のゼミでは、水戸のお店を紹介する冊子「水戸の職人物語」をつくっていたそう。制作中は初めて人をまとめる立場になり、自分の未熟さを痛感したと言います。「取材が不十分でお店の方に時間を取らせたり、スケジュール管理ができなかったり…当時は誰かに頼ることもできませんでした。いまは客観的に話せるんですが、つい最近まで完成した冊子を見ても、悲しい気持ちだったんです」。
大変な経験をした後も、水戸のまちに関わりたいと思えたのはなぜでしょうか。その疑問に対して、「まちなかはもう、大好きなので」と野原さんは笑います。
「つらかったけどそれ以上に楽しかったんです。取材で打ち解けて、なかなか笑わない方の笑顔の写真が撮れたときは本当に嬉しかった。冊子の第2号に合わせてまちあるきも行ったんですよ」落ち込んでもなお揺らがない水戸愛が、いまのお仕事につながっているのだと伝わります。
「嘘がつけなかった」 就活を経て 第一志望とは違う部署に
公務員志望の学生なら誰もがきになる、民間企業の就活と公務員試験との両立。野原さんは民間企業の説明会にも参加したものの、最終的に水戸市役所だけに絞りました。「落ちたらどうしようとは思ったけど、民間企業を受ける気になれなくて。私は嘘がつけないので、エントリーシートにも思ってないことは書けないんですよ。落ちたらまあ来年受ければいいかなって。いま考えたら甘いんですが(笑)」 これまでの地域活動をアピールできる「特別選抜」という選考を経て、無事内定。
ところが、当時の第一志望だった商工課には配属されませんでした。現在は税務事務所で、税に関する問い合わせ対応などをされています。 「税の仕組みは難しくて、初めは先輩に何回も同じことを聞いたり、電話でお客さまをお待たせしたりしてしまいました。いまはかなり説明できるようになって、市民の疑問を解消できたときに『ありがとう』と言ってもらえるのが嬉しいですね。労いの声をかけてくださる優しい先輩も多いです」 大好きなまちなかに直接関わるお仕事はできない中で、どうモチベーションを保ったんでしょうか。
「学生さんと『ジモティブズ』というまちあるきグループをつくりました。ジモティブは『地元を楽しんで生活している様』という意味の造語。水戸の発展を考えつつ豊かな生活をする人が増えればいいなと思って。出店や花火でまち全体がにぎわう両立『水戸まちなかフェスティバル』でもまちあるきを企画しました」
同時に、プライベートでの地域活動に傾倒して仕事をおろそかにしないために、精一杯努力するようになったと言います。同じ失敗は繰り返さないよう記録したり、作業を早くこなしたり、まじめに取り組むと楽しさが見えてきたとのこと。
「全力でやると『私はこの課にいていいんだ』と安心できます。それまでの私は本当に未熟で、まちあるきをしなければ自尊心が保てなかった。これからはしっかり仕事して、依頼があればまちあるきも続けたいですね」。
そんな野原さんの10年後の目標は、「仕事も地域活動もできる人」。海外の方とも英語でまちあるきしたり、「水戸の職人物語3」も出したりできればと、野望はふくらみます。
まちが好きな人に 公務員になってほしい
公務員志望の学生に向けてメッセージをお願いしたところ「学生の間に地元のコミュニティに入ってみてはどうでしょうか。初めは勇気がいるけど、一年後には自然に居られるようになるはず」とアドバイスをくれました。
「そして、とにかく諦めないでください!私は受験で勉強に限界を感じて、もう公務員はだめだと思ってました。でも諦めないように意識してたから、特別選抜の情報を得られたんだと思っています」という励ましも。
「どの部署に配属されても、前向きにまじめに頑張れる人がいい。そのためにはまずまちが好きという気持ちがないとやっていけないです。あとは働いている中で、行きたい部署に行けると希望を持つこと」
失敗や思い通りにいかない経験をしながら、それでもまちが好き、という純粋な気持ちを貫く野原さん。こんな公務員が増えれば、いきいきとしたまちになるのだろうと感じさせられました。
(茨女レポーター:外間 花怜)