笹島 沙恵さん 30歳
Profile
水戸市出身。ふたば書道会師範。5歳より加藤智子先生に師事し、本格的に書を学ぶ。茨城県立水戸第二高等学校を経て女子大に進学したのち、書道を学べる大学へと編入。卒業後、国内外での書道パフォーマンス・ロゴの制作をはじめ、書道教室の運営や大学の非常勤講師など多方面で活動。
ーQ.現在のご職業について教えてください。
ーA.書道教室の運営をはじめ、書道家として活動しています。
水戸と東京での書道教室の運営、大学の非常勤講師、国内外での書道パフォーマンスやお店のロゴ制作もしますし、テレビ番組の撮影協力をしたり、時に雑誌やテレビに出たりもします。
活動のなかでも一番力を入れているのが書道教室の運営で、生徒さんのためにいろいろな活動をしているといった感じなんです。教室を開く以上、私は生徒さんを一番大事にしたいと思っており、自分が目立つと言うよりは生徒さんたちの指針となる人になりたいなという思いがあります。
色々なことを経験しておくと、生徒さんにパフォーマンスをやりたい、ロゴを書きたいなどと言われたときにアドバイスができます。ただ字を教えるというよりは生徒さんのやりたいことも指導できたらいいなと思いますし、そのために常に色々な経験をしておきたいんです。そういった想いから、幅広い活動をしています。
ーQ.書道家として活動を始めた経緯と動機を教えてください。
ーA.5歳の頃から書を習っていた水戸の先生がとても素敵な方で、その先生のように書の道を歩みたいという思いはなんとなく抱いていました。
それでも漠然と一般の大学へ進学し、そこで参加した就職セミナーが「書道家としてやっていきたい」と思ったきっかけでした。
セミナーに参加したものの、自分が将来就職している姿というのが想像できなかったんです。自分のやりたいことってなんだろう?と悩み、ふと原点である書の先生を訪れてみました。そうしたら先生を見て、自分はやっぱりこういう空間、こういう姿を求めているなということに気づきました。
先生の姿を見て、自分も「書道家としてやっていきたい」と、やっと意思がはっきりしました。これがきっかけで書道が学べる大学へ編入を決意し、書道家になることを目標にして活動をしてきました。
ーQ.お仕事の魅力ややりがいはどんな時に感じますか?
ーA.やっぱり、一番は書道教室です。
直接生徒さんと触れ合えるから、上手に書けた時の達成感や喜びが間近で感じられますし、私が言った一言ですごくいい作品が書けたり…。反応や感動が直で伝わってくることがすごくいいなと思っています。
書道パフォーマンスもお客さんに直接見せるものなので、声かけやメッセージなど直に反応があるのが嬉しいです。活動を通して、そういった直接的なコミュニケーションは常に大切にしたいと思っています。
ーQ.書道の魅力は何ですか?
ーA.手書きならではのあたたかさや力強さ、存在感などを感じてほしいです。
文字のなかでも、特に漢字は一文字一文字に意味があります。それを人の手で書くことによって、文字を見て色々なことを感じられます。活字で見るより字が持っている力を伝えやすくなるのではないかと思っています。
現代ではデジタルがはびこっていますが、手書きならではの良さを感じられる心を持つ人が増えたらいいなと思います。その心は皆さん持っているんでしょうけど、きっとそこまで意識が向いている人は多くないので、感じられる余裕ができるといいなと思っています。
ーQ.10年後、どこで何をしていたいですか?
ーA.水戸の街を私の字で埋め尽くしたいです。お店の看板など筆文字で書かれているものはすべて私の字にして、茨城空港を出たら横断幕が私の字で書いてあるなど、それくらいまでいきたいです。
ただ埋め尽くすことが目的ではなくて、そうすることによって街ゆく人に書道を身近に感じてほしいんです。書道を気難しく思うのではなくて、こういうのやってみたいな、かっこいいな、などと思う人が一人でも増えたらいいですね。
書道に興味を持ってもらえたら本望ですが、書道でなくても「こんなに自由にやっている人がいるのなら、私も壁中に絵を描きたいな」など。一人でも多くの人が自分のやりたいことを広げるきっかけになる、そういうことが、自分の活動を通して波及していけばいいなと思っています。
《 茨女レポーターVOICE 》
「日本人の気質に根付いている文化って、人が心を落ち着けるものだと思っています。茶道や華道、おそらく書道も。昔から、そういうのが好きなんです」とほほえむ笹島さん。書道教室へ取材に伺った際、あたたかく迎えてくださる教室の雰囲気が印象的でしたが、その雰囲気はきっと、心地よさを重んじる笹島さんの人柄が生徒の皆さんへ波及してつくられているんだと感じました。 (茨女レポーター:檜山 加奈)