サユリニシヤマさん 21歳
Profile
日立市出身。茨城県立日立北高等学校を卒業後、常磐大学人間科学部心理学科に進学。学業の傍ら、県内外での作品展示、自主出版冊子(以下ZINE)の発行やワークショップの開催を行う。個展「un-found-ation」、ZINE「鞄にいれて」「un-found-ation」、水戸芸術館高校生ウィークワークショップ「『いいね!』写真を探そう」、アーティスト写真(club’89、BEAST WARS)など。
ーQ.現在行っている活動について教えてください。
ーA.写真作家として、県内外での作品発表やZINE出版などの活動をしています。
写真作家というとイメージがしづらいと思いますが、絵を描く人のイメージで考えてもらうとわかりやすいかなと思います。
まず自分の描きたいものがあって、それを描く画材としてカメラを使っている人が写真作家であると私は考えています。写真ってどうしても「記録写真」のイメージが強いから、カメラマンと混同されやすいんですけどね。
表現のツールとしてカメラを使用している理由は、絵よりカメラが感覚的にしっくりきたからです。 小さいころから絵が好きで、本当にたくさん描いていました。でも、絵はなんだかイメージしているものと描くもののズレがすごくて…。そんな中でカメラに出会って「これだ!」と思いました。それ以来、カメラで表現活動をしています。
ーQ.カメラマンではなく、作家として活動している理由は何ですか?
ーA.まず、興味のあることを探求するための実験方法として、ものを作り発表しているのが作家の定義だと私は考えています。自分も、作品を人に見せて返ってくるものに興味があるので作家として活動しています。
展示などで作品を人に見せると、意見が返ってきますよね。すると、それまで自分一人で考えて作っていた作品だったのが、返ってきた反応によって新たな気づきがたくさんあるんです。それによって自分自身の考えも深めていきたいし。展示して初めて作品と呼べるのではないかと思います
他人の反応を頼りに興味のあることを探求したいという点では、リアルタイムでフィードバックがあるワークショップにも興味があります。
とにかく、写真を撮ることは楽しいけど、撮って終わりにしたくないんですよね。
ーQ.常磐大学で心理学を学ぼうと思った理由を教えてください。
ーA.常磐大学を選んだ理由は、実家のある日立市から通える最大限の都会に出たかったからです。
作家活動をするに際して、出会いや刺激があるとないのとでは大きく差が出ると思ったので。また、人の心を学ぶことで自分の心についても少しは理解できるのではないかと思い、心理学科を選びました。
特に「アイデンティティ」をテーマにした作品を作っている時に、心理学で学んだことはすごく生かされましたね。生きていると嫌でも心と対峙することになるので、作品作りに反映されます。結果的に、この学問を選んでよかったなと思っています。
ーQ.人生を豊かにする上で、日頃意識していることはありますか?
ーA.この歳だからこそ言えることですが、自分を知るために、とにかくなんでもやってみるようにしています。
詳しくいうと、自分がどんな時にどんな感情を抱くのかを把握するということです。それが分かっていないと、これから先、周りにたくさん迷惑をかけてしまうと思うので。
例えばやったことのない仕事を任されてとりあえず「できます」って言ったけど、実際やってみたらダメだった、とか。やって始めてその仕事が楽しいか苦手かって分かりますよね。自分の限界を把握するために、今は苦手なことにもどんどん挑戦するようにしています。
ーQ.ニシヤマさんにとって、茨城の良さは何だと思いますか?
ーA.作家として成長するチャンスをくれる場だなと思います。
作家が都会よりも少ないということもありますが、ZINEの出版レーベルの方からチャンスをいただけたり、グループ展に誘ってもらえたりするのは駆け出しの作家にとってすごく大きいかなと。
先日、水戸芸術館で高校生向けの写真ワークショップをやらせていただいたのですが、専門教育を受けていないただの学生がワークショップの機会をいただけることって他では無いことだと思います。美大やギャラリーなど環境が充実していないのは確かですが、だからこそ横の繋がりが堅いし、意欲的に活動すれば認めてもらえる場所だと思います。
ーQ.10年後、どこで何をしていたいですか?
ーA.茨城で自分にチャンスをくれた人たちに恩返しがしたいです。全国だったり海外だったり、より外に作品を出している作家になっていたい。
「ニシヤマっていう茨城出身のおもしろい作家がいてね」って言われたいし、それに対して「茨城っておもしろい場所で」とか答えたいです。10年後どこで活動しているかは分かりませんが、茨城で自分を育ててくれた方々に恩返しができるくらい、外に向かえる人間になっていたいです。
《 茨女レポーターVOICE 》
「作品を通して自分の興味のあることを探求したい。写真をただ撮って終わりにしたくない」。大学生ながら、作家としてどう写真に向き合いたいかを迷わず語る姿が印象的でした。茨城は活動に手を差し伸べてくれる人が多いとの話がありましたが、失敗を恐れずチャレンジする行動力と、はっきりとした意志が人を惹きつけているのだと感じました。(茨女レポーター:檜山 加奈)